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池の月を見る
2023

池のほとりに生える桂の木の落ち葉と小枝で草木染めした麻糸 / 鉄媒染

 自身の夜の池での体験をもとに、光の仕組みと織りの構造を掛け合わせた作品を制作した。以下の文章はこの作品制作のきっかけとなった体験を書きとめた文章である。
 

“木々が囲む池がある。周りの土地から少し窪んだところに。昼はその池を眺めにくる人や、池のほとりに座る人。夜は暗くて黒い池になる。水面の模様が近くのコンクリートの壁に反射して流れる。街灯が水面を照らしている。対岸のずっと奥にある街灯は水面の向こうのほうに映る。周りを少し歩くと、次に見えてきた対岸の光がまた映る。 月は首を80度曲げたところにあった。水面に月を探す。街灯の光が紛らわしいけどぐるぐる回って探す。ずっと向こうの街灯は映るのにすぐ真上の月の光は見えない。もっと高いところから見ることができたら見つけることができるのだろうけど、私はどうしても水面に揺れるもうひとつの月を見たかった。”

 月の光は水面に反射する時、見えない光の道を辿って私の網膜に映っている。光やその反射は線としては見えないけれど点を繋ぐようにして私に届いているのだと再認識した。ここでの経糸はその見えない光の道のメタファーであり、その糸端は足元まで伸びている。物体は光を反射することで視覚することができるという基本的な定理に対して、ここでは経糸に緯糸が織り込まれることで像が現れ形を見ることができるという織りの構造に置き換えている。

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